アクティベーションでエロゲーに関わる人たちを幸せに出来ますか?

はじめに

以前、エロゲーアクティベーションに関する記事を書いたことがあり、その中でエロゲーアクティベーションに対する私自身の姿勢はほぼ出来上がっています。
ただ、あかべぇそふとつぅアクティベーションに関する漫画を読み、色々と考えさせられたことがあったので、改めて記事にしたいと思います。

参考
アクティベーション・ユーザー登録について感じたこと - 電波ゆんゆん@はてな出張版*1
漫画で分かる!アクティベーション*2

アクティベーション以外の選択肢

さて、「アクティベーションとはなんぞや」という話は、↑のリンク先を見てもらうとして、それ以外に違法コピーユーザーを締め出す方法はないのか、ということです。
他に取られている方法としては「コピーガード」「ゲーム起動時にゲームディスクが必要」等が一般的ですが、それ以外の方法を取っているメーカーにも触れておこうと思います。

Chuablesoftの場合
  1. Sugar+Spice!の修正パッチ騒動
    • 発売当初、作品同梱のシリアルコードにてユーザー登録を行わないと修正パッチを当てられないことになっていた
      • 中古品ではパッチを当てられないということ
    • ゲームを進める上で致命的なバグはなかったが、CG鑑賞がパッチを当てないと見られない等の問題もあり、批判が殺到した
    • 結局、ユーザー登録を不要にしてシリアルコードさえ入力できれば、DL可能に*3
    • ユーザー登録を行った人に対しては別途オマケ的なパッチを配布
    • この騒動は「中古ゲームが黙認されている現状」に対して、Chuablesoftがメスを入れようとしたことに対する反発と私は理解しています

  2. ポイント式ファンクラブ:Chuable soft Fan Club
    • 作品を買った人には1年間ファンクラブの会員になれる権利(=365ポイント)が付与される*4
      • 作品を買い続けていれば、その間は会員のままでいられる
    • 作品を途中で買うのを止めた等、ポイントの期限が切れた場合、再び会員になるにはポイントを購入するか*5作品を買ってシリアルコードを入力するか選択出来る
    • 過去に特例措置があった
      • Sugar+Spice! Party☆Party発売から恋文ロマンチカ発売までの間は1年以上経ってしまったが、その時は当時の会員に無償で1年分のポイントを付与
      • 「作品を買い続ければ会員のままでいられる」というコンセプトをChuablesoftが破ってしまったため
    • 壁紙配布、Sugar+Spice!スピンアウト企画、ファンクラブ向けプレゼント企画やイベント参加チケット先行販売等、そこそこ活発に活動しています。ファンクラブ内BBSもあり*6

lightの場合
  1. アクティベーション
    • 作品同梱のシリアルコード入力
    • ユーザー登録しなくてもプレイ可能
    • パッチのDLにも特に制限を設けていない
    • 最近の作品は認証回数が決められており、回数が残っていない場合、追加購入する必要がある
  2. ユーザー登録
    • アクティベーションのシリアルコードを利用して登録
    • ユーザー登録をすると、有志が作成したゲーム素材を使ったSS*7や壁紙等をDLできる
    • ログインページ内にBBSがあったが、怒りの日騒動後に撤去。以降、再設置されていない
あかべぇそふとつぅの例

2010年3月以降のタイトルにはアクティベーションを姉妹ブランドも含めて導入すると明記

  1. 作品にシークレットシートを同梱
    • イベント時に持っていくと配布物を優先的に受け取れる場合があるかも?
      • イベントに来れないユーザーを無視していないか?
      • 参加できない人向けのサービスもあるが、手間がかかる&参加者と不参加者に対するサービス*8が微妙に違う
      • http://www.akabeesoft2.com/secret.html
    • 「オマケ」であって「確実な特典」ではない
  2. ファンクラブはある

ユーザー登録のメリット・デメリット

Chuablesoftlight共にユーザー登録を行い、ログインページに入れるシステムを取っています。
では、このようなシステムを用いるメリット・デメリットを私なりにまとめてみました。

メリット
  1. ログインページ内にBBS or アンケートフォームを設置
    • 寄せられる意見の中から、正規ユーザーのものだけを取得出来る
      • ネット上の評判はプレイしていない者・違法コピーユーザーのノイズが混じる可能性がある
      • 正規ユーザーだけの意見を抽出
      • アンケートハガキより手軽
    • スタッフの書き込みがあれば、ユーザーとの距離感を縮めることも可能
  2. プレゼント企画等登録者向けサービスを行うことで、安定ユーザーを確保
    • サービスが評判になれば新規ユーザーを取り込むことも可能
      • メーカーが乱立している中、ユーザーを確保することは重要
デメリット
  1. メーカー賛美の土壌が形成される恐れがある = 批判的な書き込みをしにくい
    • 怒りの日騒動では否定的な意見も目立ったので、状況次第
  2. ユーザーを囲い込んだことで、それまで以上に彼らの声に耳を傾け、真摯に受け止める態度が求められる
    • lightがひどくバッシングされたのは、ユーザーの声を無視し改善する姿勢を見せなかったため
    • ユーザーと向き合えないメーカーにはメリットがない
  3. ユーザーを飽きさせないためには、こまめに企画を立てる必要がある
    • それだけの余裕*9があるのか
  4. 個人情報の管理
    • しっかりとしたセキュリティを維持出来るか
    • 内部のスタッフのモラルはしっかりしているのか

アクティベーション導入の目的と効果

長い前振りでしたが、本題はここからです。
冒頭の漫画を公開・アクティベーションを導入しているあかべぇそふとつぅの意図、それは特に考え込む程のものではなく、以下の2つの点を目的としているものだと思われます。

  1. 違法コピー氾濫の防止
  2. 割れザーの排除*10

もっと簡単に言うと「正規品を買って欲しい = メーカーにお金が入ってきて欲しい」これに尽きるでしょう。


ただ、アクティベーションが本当に正規品の購入につながるのか、と考えると、かなり疑問です。
確かに違法コピーによってメーカーの著作権は侵害されているのですが、著作権が侵害されていることと金銭的な損害が発生していることは必ずしもイコールではないのも事実です。
それは、違法コピーユーザーはコピープロテクトをかけられたからといって、「仕方がないから正規品を買うか」という考えを持っているのかということです。
こればっかりは違法コピーユーザーに聞いてみないと分からないのですが、私は「ほぼありえない」と思っています。
また、アクティベーションを導入して利益が増えたという話も、聞いたことがありません。
そもそも、アクティベーションのプロテクトは何度も破られて、違法コピーユーザーとメーカーのイタチごっことなっているのは周知の事実です。
アクティベーションは「破られるもの」と考えておくべきでしょう。


アクティベーションは「破られるもの」である以上、結局負担を被るのはメーカーと正規ユーザーです。
このような状況で、アクティベーションを導入することに効果があるとは思えません。

これでもアクティベーションを推し進められるますか?

さて、仮にアクティベーションによって違法コピーユーザーが排除され、メーカーの利益が確保できた・上がったとします。
問題はそれで解決でしょうか?


漫画に出てきたメーカーの意見として以下のものがあります。

あっくん 「面白くないゲームを作ったら誰も発売日に買わなくなって売上も下がる一方になるんじゃないの?」
おねえさん「そうね。メーカーさんも『少しでも早くプレイしたい』と思われるゲームを作って、その期待に応え続けることが今まで以上に必要になると思うわ。逆にそのプレッシャーをバネにしてもっと頑張ってほしいな」

句読点・誤字を編集しました。

要約すると、こういう事でしょうか。
「メーカーとしても売上が下がるデメリットがある。ユーザーには不便な思いをさせるが、その分クオリティを上げるので、ユーザーも認めて欲しい」
「メーカーとユーザーがお互い少し我慢すれば、アクティベーション導入でお互いに幸せになれる」
果たしてそうでしょうか?

作品のクオリティは頑張れば上がるの?

頑張ればどうにかなるのなら、糞ゲー・未完成ゲーはなぜ作られるのでしょうか?
また、頑張った結果、ユーザーの望んでいないものが出来上がってしまうこともあり得るわけです。
鬼まり。がいい例ですね。
メーカーが作りたいものとユーザーが求めるものが断絶する可能性がある以上、頑張ればどうにかなるものではないのでは。

一方的に「頑張るから受け入れて」と言われても困る

その作品が面白いか・払ったお金に見合う価値のある作品かどうかなんてプレイしてみなければ分かりません。
そして、面白くなかったから・未完成だったからといって、返品すればお金が返ってくるわけでもありません。
だからこそ、未完成ゲーにあれだけ多くの人が怒りの声を上げるのです。

買わなければいい話ではない

こういった類の話になると「それなら買わなければいいじゃない」という話になるのですが、その場合困るのはユーザーだけじゃないんですよね。
メーカーとしても売上が下がってしまい、結局はユーザー・メーカー共に損をするだけです。

一番迷惑を被るのは「メーカーを最も応援しているユーザー」

「買い続けているユーザー = 最も応援しているユーザー」なのです。
そして、そのメーカーを最も応援しているユーザーが一番、アクティベーションを含めた違法コピー対策全般の「めんどくささ」を実感する機会が多いわけです。
さすがに、それはメーカーがユーザーに甘えていませんか?
「買い続けてくれるユーザーなら、これくらいは我慢してくれるだろう」と。


以上のような問題は簡単に想定されるわけです。
それでもアクティベーションを推し進められるますか?

今後のアクティベーションの在り方

もし、それでもアクティベーション導入を進めるのならば、「アクティベーション以外の選択肢」でも述べたような、正規ユーザーに対する特典を用意することがメーカー・ユーザー双方納得出来る落しどころではないでしょうか。
または、購入者特典・予約者特典を充実させる。
そうやって正規ユーザーの囲い込み&新規開拓を行うことにより、メーカーの利益も確保できます。


ただ、アクティベーションを導入するだけではなく、ユーザーも何らかの恩恵に預かるシステムを構築する方が、より現実的だと思われます。
そして、アクティベーションエロゲーに関わる人たちを幸せにできるのではないでしょうか?

追記

TwitterのPOSTの内、一部を追加しました。

へなへな
@henahena
そういや、昨日のアクティベーションの話。アクチの運用コストは制作費用に上乗せされて、結局正規ユーザー負担になるよねということを思った

22:03:44
へなへな
@henahena
特典みたいな直接正規ユーザーに転化されるサービスなら別にいいと思うんだ。でも、「アクチを導入すると正規ユーザーにもメリットがあるよ」という話は風が吹けば桶屋が儲かるレベルだと思う。それは、ちょっとなぁと

22:07:33
へなへな
@henahena
それなら、クオリティがどうたらこうたら言わずに素直に「違法コピーユーザーを排除するために正規ユーザーも協力してくれ」と言われた方がまだスッキリする

22:10:03

*1:私が以前書いた記事

*2:あかべぇそふとつぅ作成の漫画

*3:新品・中古問わず

*4:同封のシリアルコードをサイトに入力するとポイントが加算される

*5:1,200円

*6:スタッフの書き込みもあります

*7:ANOTHER STORY

*8:参加者はシート1枚から対応・不参加者はシート2枚から対応

*9:資金・時間・労力……etc

*10:違法コピーユーザー