ゲームエンジンから見るエロゲー
エロゲーを作るのに必要なものはなんでしょうか?
CG?
シナリオ?
音楽?
確かに、これらの入っていないエロゲーは、まずありえません。
しかし、これだけでエロゲーを作れるかと問われたら「否」です。
このゲームエンジンが直接ゲームを楽しむということに密接に関わってくるのは、演出だけです。
ですが、エンジンがなければ、CGも表示されない・テキストも読めない・音楽も流せない。
というわけで今回の更新は、エロゲーを作るのに絶対に必要であるゲームエンジン、つまりゲームの中身ではなく外側という観点からエロゲー・メーカーに言及したいと思います。
まず、ゲームエンジンの種類から。
ゲームエンジンで有名なのがNScripterと吉里吉里です。
この二つの特徴として、使える機能も一通り揃っており、ゲームを作る場合ホームページを作るような感覚でタグを打っていけばいいだけという非常に使いやすいシステムです。
これらは同人ゲームで使用する場合、無料ということもあって同人ではよく見かけるエンジンです。
また、吉里吉里はNScripter以上に演出を凝ることができるのも特徴ですが、商用にも無料で使えるということもあって、TYPE-MOONやあかべぇそふとつぅなどのメーカーだけでなく、低価格ヌキゲーを作っているメーカーは軒並み吉里吉里を使用しています。
上にあげたエンジンは個人が作成したものですが、企業が自前で作るものもあります。
例えば、アリスソフトのSystem x.xシリーズ、ageのrUGPシステム。
また、Visual Art'sや戯画*1のように、傘下のブランドに自社の製作したエンジンを使わせることも。
他にも、「インストールされたファイル形式を見れば、AugustとPurple softwareが同じエンジンを使っている→二つの企業は同じブランドの傘下、ブランドパートナーもしくは直接的な関係は無いが同一の企業と契約している」
これくらいは分かります。
またエンジンではなくコピープロテクトを例にとってもいいです。
ブランドの方向性は正反対ですがういんどみるとM no Violetは同じプロテクトを使っています。
ゲームエンジンの種類を見ただけでも、企業間のつながりをある程度知ることができます。
さて、次はエンジンがゲームに及ぼす影響から何が見えるかについて。
先にあげた吉里吉里は「無料・使いやすい・演出が豊富」と良いこと尽くめのようですが、欠点に「動作が重い」ということが上げられます。
特に一番気になるのがスキップ。
反応が他のゲームエンジンに比べ遅く、また速度も遅い。
この欠点を埋めたのが、TYPE-MOONが作ったFate/stay nightで見られたシーンスキップ機能。
確かにシーンスキップは便利ですが、スキップ速度の速いエンジンではそこまで必要ではありませんし、シーンの一部だけ文章を読みたい場合にはむしろ邪魔なだけです。
この機能はスキップに欠点がある吉里吉里であるからこそ真価を発揮するのです。
そう考えればTYPE-MOONは「作りたいものをとことん突き詰める」という同人サークルの良さをうまく引き継いでいると言えます。
対して、同じ吉里吉里を使っているあかべぇそふとつぅは自社でこの欠点を直そうとせず、与えられた環境に胡坐をかいているように感じます。
スキップが遅い環境下で、車輪は共通ルートが長いくせに選択肢が大量にあり、選択後のスキップはキャンセル。
同じ同人上がりでも、TYPE-MOONと正反対です。
車輪以外の作品はプレイしていないのでこれ以上は言えませんが、この欠点が無くなっていることを願うばかりです。
また、システムが酷いものの代表としてCIRCUSがあります。
D.C.II をプレイすれば分かりますが、既読スキップは役に立たない・シーンスキップも微妙・演出は有って無いが如し・エンディングは跳ばせない・非アクティブでは動作しない(だったと思う)。
2006年の作品とは考えられない。
どのエンジンを使っているのかは知らないが、吉里吉里を使えば改善できるものばかり。
それでも無料のエンジンを使わず、どこぞの役に立たないエンジンを使っている体たらく。
これを見ただけでも本気で「ゲーム」を作りたいと思っているようには見えません。
この逆がアリスソフトとage。
アリスソフトの演出は少なく、またシステムはそこまで目新しいものではありません。
しかし、自社の持ち味である「遊べるゲーム」を動かすエンジンとしては抜群の出来。
ageの場合はテキストに合わせて場面を効果的に見せる演出が群を抜いています。
しかも、この二つの企業のエンジンは完成形があるのではなく、今現在も進化し続けています。
彼らは自分たちが作るものが何であるかはっきりと分かって、それに向かって努力をしています。
このようにエンジンを見るだけでも、企業の持つ技術力・「ゲーム」ということに対するこだわりをうかがうことができるのです。
エンジンを軽んじている企業にはまともなものを作ることができないと言ってもいいでしょう。
ゲームを批評する時、シナリオ・音楽・CGに目を奪われがちです。
もちろん主役はこの三つでしょう。
もしくは演出を入れて四つ。
しかし、ゲームエンジンあってのゲームであり、エンジン一つ見ても上で示したように様々なことを知ることが可能なのです。
たまにはエンジンに目をとめてみて、そこから何が見えるのか考えてみるのもよろしいかと。
ゲームは、動いてこそのゲームであり。